Web API の目的と技術要素 ②Web API が求められる背景

by 杉本和也 | 2024年10月29日 | 最終更新日: 2024年10月29日

Web APIの目的と技術要素 ②Web APIが求められる背景

※本記事は Software Design 2022年8月号 Web API 特集 「第1章:Web API の目的と技術要素」の記事を再編集したものです。以下の章に分けて公開しています。

  • ①Web API とは
  • ②Web API が求められる背景(本記事)
  • ③Web API の開発に必要な技術要素
  • ④Web API の実例

次に、Web API がどれだけ広く利用されているのか、その重要性について「開発アプローチ」と「ビジネス」という2つの観点から考えてみます。

開発アプローチ観点でのWeb API の重要性

みなさんはAmazon で商品を買うときや注文状況を確認するとき、つまりAmazon のデータと接するときに、どんな「ソフトウェアやサービス、アプリ」を使っているでしょうか?

ある人はWeb サイトで注文していると言うでしょう。また、iPhone やAndroid のアプリから購入するという人もいるでしょう。Amazon Echo のようなスマートスピーカーから注文することもできますし、在庫重量を計測するIoT マット(IoT マットとしては以下のSmartMat Lite などが有名です。https://service.lite.smartmat.io/)を通じて自動注文することもあるかもしれません。

このようにあるサービス1つとっても、ユーザーエクスペリエンス(UX)を生む場所、つまりタッチポイント(顧客接点)は多様に存在するようになりました。これらのタッチポイントの裏側には数多くのWeb API が存在します。

今までであれば、ユーザーエクスペリエンスを提供するインターフェース・ソフトウェアが比較的少なかったため、モノリシックな構成、つまりサーバサイドでビジネスロジックやHTML のレンダリングまで賄うようなWeb アプリの開発手法としてMPA(Multi Page Application)が効率的かつ主流でした。

しかしながら、上記のようなタッチポイントの多様化に伴い、ビジネスロジックやデータに接する処理部分を共通化、コンポーネント化していかなければならなくなりました。そこで重要な役割を果たしているのがWeb API です。Web API という共通インターフェースがサービスの持つビジネスロジックを抽象化し、それぞれのUI/UX からの再利用性を高めています。

それらはJavaScript などのSPA(Single Page Application)や各種スマートフォンアプリなどのユーザーエクスペリエンスに直結するレイヤのものもあれば、たとえば注文処理や配送処理など特定のビジネスロジックのみを担うマイクロサービスとしてのWeb API も存在します。

このような開発アプローチの観点からWeb API の重要性が増していることがわかります。

ビジネス観点でのWeb APIの重要性

ビジネスの観点でもWeb API の重要性は増しています。筆者は最近EV(電気自動車)を購入しました。しかし、少し前までは自宅に充電設備がなかったので、充電スポットを探すためのサービス「EV Smart」(https://evsmart.net/spot/miyagi/l41009/q41017/)をよく利用していました。このサービスではGoogle Map のWeb API が利用されており、地図上で現在地付近に存在する充電スポットを探すことができます。

また、MoneyForward(https://moneyforward.com/)を使ってクレジットカードの利用状況や銀行口座の残高・入出金を収集し、家計簿を付けています。ここでもサービスはクレジットカードや銀行のデータ収集のためにWeb API を利用しています。

このように、外部のサービスを組み合わせて新しいサービスを提供することを「マッシュアップ」と呼びます。

マッシュアップを行うことで、サービス開発者はよりメインの機能の開発に集中することができ、開発を効率化できますし、新しいビジネスの創造にもすばやくつなげることができます。有名なマッシュアップ事例としてはタクシー配車アプリ「Uber」が地図情報APIやクレジット決済APIなどを駆使してアプリを開発・提供しているケースではないでしょうか。

なお、ここまでは「外部のWeb API を利用する」という観点でのお話が中心でしたが、「自社のサービスでWeb API を提供する」という観点も忘れてはいけません。

たとえば保険商品を提供する株式会社just InCase はユーザーに対して、さまざまなサービスの中に「保険を契約する機能」を組み込めるWeb API を提供しています(https://justincase.jp/insurance-api)。これにより、たとえばレジャーなどを申し込むWeb サイトで、申し込み手続きの流れの中に保険加入の手続きを組み込んでもらうことができます。

多様なユーザーがWeb API と関わる時代

このように、Web API は多様なユーザー、企業、サービスが関わって利用・提供する時代に突入しています。

Web API の重要性が増してきていると同時に「誰に使われるのか?」「どのように使われるのか?」といった、プロダクトとしてのWeb API を意識した設計・開発の必要性も増していると言えます。

今回の特集ではSPA のアプリケーションを作ることを通じて、Web API の開発を体験してもらいますが、「ビジネスにおける競争力となる技術」に取り組んでいると考えてもらえたらうれしいです

関連コンテンツ

トライアル・お問い合わせ

30日間無償トライアルで、CData のリアルタイムデータ連携をフルにお試しいただけます。記事や製品についてのご質問があればお気軽にお問い合わせください。