常に変化するソフトウェア開発の領域において、堅牢でスケーラブルなAPI を作成することは、アプリケーションとサービス間のシームレスな通信を実現する上で最も重要です。この記事は、RESTful インターフェースの開発における複雑さを理解することを目標にします。API 開発プロセスのあらゆる側面を知り、複雑さを解き明かし、効率的で効果的なREST API を開発するための必要な知識とスキルを身につけていきましょう。
このガイドは、経験豊富な開発者でも、Web サービスの世界に足を踏み入れたばかりの開発者でも、確信を持ってアプリケーションとサービスを連携できるような明快さとインサイトを提供します。
※本記事はCData US ブログHow to Build a REST API: A Step-By-Step Guide の翻訳です。
REST API とは?
REST API(Representational State Transfer Application Programming Interface)は、Web サービスとデータのやり取りを行うための(そしてそのようなWeb サービスを開発するための)一連のルールと規約です。
RESTful なシステムでは、リソース(データやサービスなど)は一意のURL によって識別され、これらのリソースとのやりとりは、GET、POST、PUT、DELETE などの標準のHTTP(Hypertext Transfer Protocol)メソッド(一般にCRUD 操作として知られる)を使用して実行されます。
REST API はステートレスなコミュニケーションモデルで処理が行われます。つまり、クライアントからサーバーへの各リクエストには、過去のやりとりに依存することなく、そのリクエストを理解して実行するために必要なすべての情報が含まれています。
例えを使って説明すると
REST API を図書館として想像してみてください。そこでは各書籍がリソースに相当し、司書(サーバー)は各書籍に一意の識別子(URL)を割り当てたカタログを提供します。あなたは図書館のルールに基づいて、本を借りたり(GET)、返したり(PUT)、追加したり(POST)、削除したり(DELETE)することができますが、これらはすべて標準の一連の指示に従って司書とやりとりすることによって行うことができます。
REST がビジネスアプリケーションの主流に
REST は、そのシンプルさ、柔軟性、使いやすさから、API 実装の主流となっています。RESTful API は業界を問わず広く採用されており、Web サービスを開発する上でよく利用されています。一方、SOAP は特定のエンタープライズシナリオではまだ使用されているものの、複雑であるため人気は低下しています。2017年に実施された調査では、API の83%でREST アーキテクチャが採用されているのに対し、旧来のSOAP プロトコルが選択されているのは15%です。
基本原則
RESTful API は以下の6つのスタイルに準拠しており、そのうち5つは必須、1つは任意です。
- クライアント・サーバー構成:API は、クライアント(リクエスター)とサーバー(レスポンダー)間で関係性を分離します。両者はネットワーク(通常はインターネット)を介してやりとりします。
- ステートレス:リクエストとレスポンスのやりとりはそれぞれ、過去のやりとりから独立して行われます。サーバーはリクエスト間のクライアントに関するコンテキストを保存しません。
- キャッシュ: (ブラウザやプロキシなどの) 仲介者は、レスポンスをキャッシュすることで、パフォーマンスを向上させ、サーバーの負荷を軽減することができます。
- 統一インターフェース: クライアントは、リソースの種類に関わらず一貫したセマンティクスを持つ一連のメソッド(通常はGET、POST、PUT、DELETE)を使用してリソースにアクセスします。
- レイヤーシステム:通信に影響を与えることなく、クライアントとサーバーの間に仲介者を配置することができます。これにより、セキュリティ、負荷分散、キャッシュなどの機能が可能になります。
- コードオンデマンド(オプション): サーバーはクライアントに実行コード(スクリプトなど)を動的に配信して、機能を拡張することができます。
前提条件
最適な環境を開発することで、コーディング、テスト、コラボレーションを合理化し、効率を上げるとともに、堅牢なREST API 開発を行う強固な基盤を確保します。この開発環境のセットアップには、スムーズで効率的な開発プロセスを実現するために複数のステップが必要です。
ここでは、REST API 開発環境を開発するための基本的な方法を説明します。
- 計画: API で公開するリソース、その形式(JSON やXML など)、サポートする操作(CRUDなど)を定義します。
- プログラミング言語とフレームワークの選択:よく使われるオプションには、Node.js(Express.js)、Python(Django、Flask)、Java(Spring Boot)、Ruby(Rails)などが挙げられます。
- 開発環境の開発:選択した言語とフレームワークに必要なツールとライブラリをインストールします。
- API エンドポイントの設計: リソースにアクセスするためのURI と、さまざまな操作に使用するHTTP メソッド(GET、POST、PUT、DELETE)を定義します。
- API ロジックの実装:リクエストを受け取り、データを処理し、レスポンスを生成するコードを記述します。
- テストとデバッグ:API が期待どおりに機能することを確認し、エラーに対処します。
- API ドキュメントの作成:API を開発者が理解して効果的に使用できるように、明快で簡潔なドキュメントを作成します。
REST API 開発環境についての補足的なTips を以下に記します。
- バージョン管理システム(github.com など)を利用して変更を追跡し、ほかのメンバーと共同作業ができるようにします。
- API を保護するために、認証や認可のようなセキュリティ対策を実装します。
- ルーティング、ミドルウェア、エラー処理などの機能を提供しているフレームワークを選択します。
- API テストツールを採用してテストを自動化し、品質を担保します。
企業は、特定のプログラミング言語に対応する既存のフレームワークやツールを活用することで、REST API を効率的に開発できます。ここでは、REST API を開発するための注目すべきフレームワークとツールをいくつか紹介します。
- CData API Server:軽量で自己管理型のアプリケーションで、エンタープライズデータ用のプロフェッショナルなAPI を開発をポイントアンドクリックのインターフェースで設定できます。
- Python Flask:Python のWeb フレームワークであるFlask には、Flask-RESTful 拡張機能が搭載されており、迅速かつ簡単なREST API 開発が可能です。
- js:スケーラビリティの高さで知られるNode.js は、Netflix やPinterest のような業界大手がスケーラブルなREST API の開発に採用しているrestify フレームワークを利用しています。
- Ruby on Rails:Rails 5の導入に伴い、Ruby on Rails にはWeb API の作成を効率化するAPI モードが組み込まれ、REST API 開発に便利なオプションが提供されるようになりました。
- Spring (Java):Java のSpring フレームワークは、REST API を作成するための堅実な選択肢です。Spring は、RESTful インターフェースの複雑な作成方法について、開発者をガイドする詳細なチュートリアルを提供します。
REST API を開発するための適切なプログラミング言語を選択するのは簡単なことではありません。しかし、この選択は開発速度、機能性、そして将来の保守性に影響を与える重要な決定となります。以下が考慮すべきキーとなる要素です。
- プロジェクトの複雑さ:社内利用のシンプルなAPI を開発しますか、それとも一般公開する複雑なAPI を開発しますか?前者にはPython のようなシンプルな言語が適しているかもしれませんし、後者にはJava のような堅牢な言語が適しているでしょう。
- パフォーマンス要件:開発するAPI は、大量のトラフィックや複雑な計算を管理する必要がありますか?Go やNode.js のような言語はパフォーマンスに優れていますが、一方Python は開発の手軽さを重視していますが、パフォーマンスには気を付ける必要があります。
- 慣れた技術 or 新しい技術:すでに慣れ親しんでいる言語を選択すれば、開発をスピードアップし、プロセスを楽しむことができます。新しいことを学びたい場合は、コミュニティの規模や学習曲線などの要素を考慮しましょう。
REST API を開発するには
1. API の計画
API 開発の綿密な計画を立てることで、開発を成功させる基盤を作り、ターゲットユーザーのニーズを満たし、多様なアプリケーションにシームレスに連携するための構造化された直感的なインターフェースを提供することができます。
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明確で論理的なAPI 構造を設計する
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アプローチ:エンドポイントとデータ構造をユーザーの期待値に合致するように構成します。シンプルで一貫性のあるRESTful の原則に従っていることを確認しながら構成を行います。
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例:ソーシャルメディアAPI でエンドポイントを論理的に構造化するには、ユーザー情報は /users、ユーザーの投稿は/posts のようにします。個別のユーザーの詳細は/users/{userID} とするなど、明確な命名規則を使用します。
2. RESTful エンドポイントの作成
RESTful エンドポイントとは、Web サービスのリソースを表すURL です。各エンドポイントは、システム内の特定の機能またはデータエンティティに対応し、クライアントがサーバーとやりとりする方法を提供します。
エンドポイントを定義する手順:
- リソースを特定:API で公開するエンティティや機能を決定します。例えば、医療システムであれば、エンティティは「Patients(患者)」「Doctors(医師)」「Appointments(予約)」「Medical Records(カルテ)」となります。
- 命名規則を確立:エンドポイントには、リソースの性質を反映した明確で一貫性のある名称を使用します。以下に例を示します。
- /patients は、患者に関する操作用です。
- /doctors は、医師に関する操作用です。
- /appointments は、予約に関する操作用です。
- /medicalrecords は、カルテに関する操作用です。
- リソース階層を定義:必要に応じてリソースの階層構造を整理し、論理的な構造を確保します。
- /patients/{patientID} は、特定の患者の詳細にアクセスします。
- /doctors/{doctorID} は、特定の医師の詳細にアクセスします。
- /patients/{patientID}/appointments は、特定の患者の予約のリストです。
- 医療システムの例での患者情報のエンドポイント: /patients (Resource: Patient Information)
CRUD 用のHTTP メソッド
- GET /patients:すべての患者のリストを取得します。
- GET /patients/{patientID}:特定の患者の詳細を取得します。
- POST /patients:新規患者のレコードを作成します。
- PUT /patients/{patientID}:特定の患者の詳細を更新します。
- DELETE /patients/{patientID}:特定の患者のレコードを削除します。
このような法則でエンドポイントを定義することにより、前述のヘルスケアAPI の例では、患者と医師の情報、予約、カルテを管理するための構造化された直感的なインターフェースを提供することができます。
3. データの処理
REST API で効率的にデータを扱うには、熟考されたデータモデリング、データベースに対する考慮、合理化された格納と取得のプロセスが必要になります。
データモデリングとデータベースに関する考慮事項
データモデリングは、データの構造とエンティティ間のリレーションを定義することを含みます。RESTful API のコンテキストでは、データがどのように表現され、保存されているかを理解することは、効率的な運用を行う上で非常に重要です。
医療システムの例
- エンティティ:「Patient」、「Doctor」、「Appointment」、「MedicalRecord」などのエンティティを定義します。
- 属性:各エンティティの属性を指定します(例:患者名、医師の専門領域、予約日)。
- リレーションシップ:リレーションを開発します。たとえば、患者が複数の医療記録を持っていたり、医師が予約に関連付けられていたりするような場合です。
- 正規化: 正規化手法を適用し、データの冗長性を最小限に抑え、データベースの効率を向上させます。
RESTful API でのデータの保存と取得
データの格納と取得には、API エンドポイントを介してデータベースから情報を作成、更新、取得することが含まれます。
- 患者情報を格納するためのエンドポイント:POST /patients は、新規患者のレコードをデータベースに追加します。
- 患者情報を取得するためのエンドポイント:GET /patients/{patientID} は、データベースから特定の患者の詳細を取得します。
4. 認証とセキュリティ
API のセキュリティには、データの保護と認可されたアクセスの確保が含まれます。主な対策には、暗号化、認証、認可、一般的な脆弱性に対する対策が挙げられます。
ユーザー認証とロールベースのアクセス制御の実装
- ユーザー認証: アクセスを許可する前に、ユーザーのID を検証します。セキュアな認証を行うために、JWT、OAuth、API キーのような仕組みを採用しましょう。
- ロールベースのアクセス制御 (RBAC):ユーザーの役割に基づいて権限を割り当て、アクセスを制御します。ロール(管理者、ユーザーなど)を定義し、各ロールに特定の権限を設定します。
5. テストとデバッグ
REST API のテストとデバッグを行うことで、機能性を確保し、問題を特定し、システムにおける堅牢かつエラーのないやりとりを担保することができます。
REST API の単体テストと結合テスト
- 単体テスト:個々のコンポーネント(関数やメソッドなど)が正しく機能することを検証します。テストフレームワーク(JUnit、pytest など)を使用して、コードの独立した部分をテストします。
- 結合テスト:コンポーネント全体が期待通りに連動することを確認します。API エンドポイントや外部依存関係を含む、システムの異なる部分間のインタラクションをテストします。
一般的なAPI の問題のデバッグ
- ユニットエラーメッセージ:エラーメッセージを調べ、問題の性質と発生箇所の手がかりを探ります。
- リクエストとレスポンスのログ:受信リクエストと送信レスポンスをログに記録し、フローを追跡して異常を特定します。
- コードレビュー:同僚と協力してコードをレビューし、ロジックエラーや検証漏れ、セキュリティ上の問題がないか確認します。
テストツール
6. API のデプロイ
最適化されたコード、セキュリティ、ドキュメントを用意して本番環境を準備します。クラウド、オンプレミス、またはコンテナ化を利用してデプロイし、スケーラビリティと信頼性を確保します。
API を本番環境用に準備
- コードの最適化:パフォーマンスを高めるためにコードを最適化し、不要なオーバーヘッドを取り除きます。
- セキュリティ対策:セキュアな認証、暗号化、アクセス制御を実装し ます。
- 環境設定:本番用の環境変数を設定します。
- データベースの最適化:データベースのクエリを最適化し、適切なインデックスを作成します。
- エラー処理:堅牢なエラー処理とログ収集の機構を実装します。
- ドキュメント:ユーザーに包括的なAPI ドキュメントを提供します。
- テスト:パフォーマンステストやスケーラビリティテストを含む徹底的なテストを実施します。
デプロイ戦略
- クラウドベースのデプロイ
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- 利点:スケーラビリティ、フレキシビリティ、マネージドサービス
- 例:AWS、Azure、Google Cloud Platform
- 検討事項:インフラの選択、負荷分散、バックアップとディザスタリカバリなど
- オンプレミスでのデプロイ
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- 利点:インフラのフルコントロール
- 検討事項:ハードウェア、メンテナンス、スケーリングの計画が必要
- コンテナ化
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- 利点:ポータビリティ、スケーラビリティ、一貫性
- 例:Docker、オーケストレーション用Kubernetes
- 検討事項:コンテナのオーケストレーションとレジストリ、Docker Compose、コスト管理など
- Serverless architecture
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- 利点:従量課金制、自動スケーリング、インフラ管理の軽減
- 例:AWS Lambda、Azure Functions
- 検討事項:ベンダーロックインの懸念、バージョン管理、コストの最適化など
7. API ドキュメント
包括的なAPI ドキュメントは、開発者にロードマップを提供するために必要不可欠です。ドキュメントによって、機能が明確になり、連携が促進され、サポートのニーズが減少し、コラボレーティブで効率的な開発エコシステムが形成されます。Swagger のようなツールは適切なドキュメント作成を支援し、開発者のアクセシビリティと理解を確実にし、API のシームレスな統合と効果的な利用を促進します。
CData API Server:ノーコードで今すぐはじめられるREST API
以上のプロセスから明らかなように、REST API をゼロから開発するには、相当な時間とリソースが必要です。
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