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詳細はこちら →2020年 Web API News・Topic 64選 総まとめ!
こんにちは! CData Software Japan リードエンジニア兼API Horic担当の杉本です。
ダメ元でやってみよう! ということではじめたWeb API Advent Calendar 2020ですが、お陰様ですべての日程で記事を公開することができました!
最後の締めに、今年のAPI関連のプレスリリースや新規API公開などを棚卸ししましたので、総まとめでお届けしたいと思います!
ちなみに内容は基本的に日本国内向けの発表を中心として選択していますが、国内でも大きく取り上げられた海外の製品についてもいくつか触れています。
- API公開・アップデート
- SaaS API 連携
- iPaaS
- API開発・テスト
- ビッグデータ
- IoT
- 物流
- フィンテック
- APIマーケットプレイス・DevRel
- 保険
- 公共
- 資金調達
- API レポート
- おわりに
API公開・アップデート
今年もたくさんのAPIが公開されましたが、その中でも大きな目玉だったのは、やはりAPIの元祖とも言えるTwitterが最新のAPIを公開したことではないでしょうか。2012年以来の大幅アップデートでした。
国内では、freee受発注サービスはβ版であるにも関わらず、API公開もしっかりと出しているのが印象的でした。サービス本体とAPIはセットである、というメッセージが感じられます。
EC-CUBEは新規公開ではなくAPIのアップデートですが、APIのプロトコルとしてGraphQLに切り替えた点が特徴的でした。国内でGraphQLのパブリックAPIを提供しているのは Kibelaくらいでしょうか。
また、しっかりとAPI仕様書へのリンクが掲載されているプレスリリースが増えてきたように感じます。IEYASU・NotePMが新規のAPIながら、そのあたりをしっかりと押さえたプレスリリースを行っていました。
SaaS API 連携
今年もとても数多くのSaaS API連携のプレスリリースを見てきましたが、その中でも印象的だったのをいくつか紹介したいと思います。
クラウドPOSを提供するスマレジがEC関連API周りとの直接連携サービスを自社で提供を開始したのは、個人的に大きなトピックでした。一番需要がある要素ではあるものの、一番連携が大変な部分でもあります。
SanSanが新しく展開した請求書オンライン受領サービス「BillOne」と早速連携を開始したOBCの勘定奉行クラウドはスピード感、またこのコロナ禍における需要も鑑みて、取り上げてみました。
このコロナ禍といった意味では、ビジネスチャットと印鑑BotのAPI連携の鈴与シンワートの取り込みもユニークですね。
GMOとセイルボートがAPI連携は、ただの電子化促進のAPI連携にとどまらずハブ化構想を見据えている点が気になるトピックです。
最後は少し例外的ですが、SaaS同士のAPI連携を主体とする会社が設立された、というのはこのAPI連携の需要が増す昨今において重要なトピックであると感じますね。
iPaaS
なんといっても、今年はさらにiPaaS周りが盛り上がった1年でしたね。海外では「AWS」・「FileMakerのClaris」が新しくiPaaSを発表しました。
また、国内においても、「BizteX Connect」「Jidoca」「Datapia」等が新規サービスとしてiPaaSを展開しました。AnyflowやActRecipeなどが国内iPaaSとしては先駆けですが、競争がさらに激化しそうですね。
Jitterbitのように日本国内で本格的に活動を開始するiPaaSも目立った1年だったかなと思います。
API開発・テスト
個人的に日本ではAPI開発やテストをサポートする製品ってほとんど存在しないイメージだったのですが、APIの普及に伴いそういったプレスリリースもいくつか見かけました。
APIドキュメントの重要性は以前のBlogでも取り上げましたが、Web APIの仕様書作成の領域で国産のITベンチャー Funseekが出てきたのは興味深いポイントです。
また、APIの公開が多くなるに連れ、安定性・テストへの取り組みは重要性を増します。テストケース自動生成を実現したAPIテストサービス「RakAPIt」はそういった点で今後の需要拡大が気になるところです。
AI・API関連も様々なサービスが出ていましたが、国内では分析ロジック・AIをプログラミング不要でシステム連携できる nehan がAPIをリリースして、連携性をさらに高めたのが印象的でした。
ビッグデータ
自社内の直接的な強みであるビッグデータを活用したAPIの公開も特徴的な1年だったのではないかと思います。
新規のAPIとしては、ファッションテックの「TNQL」、フードテック(と言っていいかは微妙かもですが)のRetty・オープンエイトの「Food Data Platform」などはその取組のユニークさが目立ちますね。
また既存の領域でも、ただビックデータを提供するだけでなく、ウェザーニュースの体感予報であったり、インクリメントPの住所の正規化、ゼンリンの時空間データベース等、ユースケース特化でビッグデータの力を活用できるAPIの提供が行われたという点もユニークでした。
Yahooは最近自社ビッグデータを活かしたAPIの提供にかなり力を入れてきている印象があります。Yahooの検索データを活かした、DS.APIもそうですが、求人APIの公開や広告APIの刷新も見受けられました。
IoT
個人的に興味深かった IoT周りのAPI連携は保育業務支援SaaS「コドモン」が提供するベビーセンサーなどのIoTデバイスとAPI連携でした。赤ちゃんの状態チェックのような連携は個人のBlogなどでは見たことがありましたが、しっかりとビジネスに組み入れて展開しているのは新鮮な驚きでした。
また、スマートメーターの浸透からか、電力データの測定を効率化するためのデータ連携APIや、メーター点検業務を効率化するAPIの提供といったトピックがユニークでしたね。(後者はどちらかといえば、メーター特化のOCR APIですが)
また、三菱電機のような古参電機メーカーがIoT基盤の構築・標準APIを活用していく、といったプレスリリースを打っていたのは印象的でした。(もうちょっと具体的な内容に踏み込んで欲しいところですが)
物流
今年避けて通れないトピックはやはり新型コロナウイルスによってビジネスのあり方・生活の仕方が大きく一変した点ではないでしょうか。
それにより、宅配ロボ・宅配サービス向けのAPIといったプレスリリースはトピックとして目立ったように感じます。GoogleのナビAPIはまさにこのコロナ禍において、今まであまり意識していなかった分野への進出であったということが、プレスリリースからも読み解けます。
また、ハコブのようなロジスティクスベンチャーが日野自動車と共に物流情報プラットフォームの構築を目指し、他サービス事業社にもAPIを通じて接続できることを目指す動きが出ているのも大きな変革トピックであるように感じます。
フィンテック
今年、20年5月末は銀行を中心とした各金融機関のオープンAPI提供およびそのAPIによる電子決済等代行業サービスとの契約努力義務の締結期限でしたね。
そういったトピックがあったせいか、それらに関連するプレスリリースや研究会の発足が目立った1年でした。会計freeeのプレスリリースでは全国136の銀行のうち、118の銀行と契約締結(6月時点)となっており、ほとんどの銀行がAPIに対してなんらかの対応が行われたと見て間違いないように思われます。
しかしながら、それぞれのAPI仕様の乱立・参照系・更新系のサポート範囲のばらつきといった課題が明らかになったこともあり、そこに対して共通的に取り組んでいこうという動きが、各種研究会の発足といった形で現れたのかなと感じます。
銀行側の動きを見てみると、GMOあおぞらネット銀行はもともとの母体であるIT企業としての特性を生かして、デベロッパーフレンドリーな施策を大きく進めていることが印象的でした。API実験場・sunabarの提供はそのもっともたる例だったと思います。
別な角度を見てみると、新生銀行は自社のオープンAPI基盤を活かしたアプリのリリースが良い事例でしたね。対外的な連携だけでなく、自社としてこのAPI化した資産を活かしていけるのはまた一つ重要なポイントですから、他の銀行からもどんどんこういう事例が出てほしいなと思います。
ユニークな動きとしては、auカブコム証券のREST API公開はとてもいい取り組みだなと感じます。BitCoinなどはこのあたりが活発な印象ですが、既存の証券会社はまだまだな印象なので今後に期待したいところです。
ちなみに、個人的にフィンテックで最も大きなトピックだったのは、Stripeの埋込み型金融サービスの提供に関するプレスリリースでした。
Banking-as-a-Serviceといった形で本文では呼んでいますが、銀行の機能コアをマイクロサービスとして隠蔽して、Stripe の APIに載せるという野心的な試みです。銀行APIの目指すべき一つのあり方を示していると感じる取り組みですね。今後の動向も必見です。
APIマーケットプレイス・DevRel
国内では 会計freeeが先駆けとして取り組みはじめたAPIのマーケットプレイスですが、今年も様々な会社でこの分野の取り組みが活発に行われました。
新しいところでは、LINEのマーケットプレイスや会計系クラウドサービス・勘定奉行を提供するOBCのマーケットプレイスが新しく登場しました。LINEは書籍として「LINE API実践ガイド」 なども発売し、より一層API活用の浸透を狙っていることが伺えますね。
また、MaaS(Mobility as a Service)向けに活用できるマーケットプレイスをMONETが提供したのがユニークな取り組みです。
フィンテック絡みでもありますが、NTTデータが来春を目途に、金融機関とフィンテック事業者をつなぐ「APIマーケットプレイス」を開設するという発表も新しい取り組みの一つではないでしょうか。
また、SaaS連携サービスを開発している「ストラテジット」が SaaS to SaaS連携のアプリストアを発表したというのも面白い取り組みです。SaaSベンダーが提供する以外の選択肢が出てきていますね。
既存のマーケットプレイス提供ベンダーを見渡してみると、HubSpotでは連携アプリが500種類を突破するなど、その成長の目覚ましさ、需要が感じられるリリースを出していました。
すでにマーケットプレイスを展開しているfreee は、さらなるマーケットプレイス・API連携の充実に繋がるであろう、イベント「freee Biz Tech Frontier 2020」や「Qiita Advent Calendar 2020 への協賛」といったトピックがありましたし、スマレジもAPI連携アプリ拡充のため、最大賞金1000万円のアプリコンテストを開催するといった動きがありました。
保険
保険・InsurTech周りでは、「INSURANCE API ORGANIZATION」を発足が気になるトピックでした。個人的にあまり業界横断的な動きが見えていなかったので、これによりさらに動きが活発になりそうですね。
海外でも健康保険業界のプレイヤーをつなぐAPIを提供するスタートアップのNoyoが大きな資金調達をしたこともあり、まだまだAPI含めて成長余地が大きく存在する分野だなと感じます。
公共
公共関係で一番大きなトピックと感じたのは政府のIT総合戦略室が公開した「オープンデータAPIポータル」ですね。こちらのBlogでも取り上げました。
まだまだ大きなトピックは多くない公共周りですが、公的支援制度の情報提供を行うAPIやデジタルアーカイブへの相互接続などがユニークな取り組みだなと感じました。
また、まだ研究段階ではありますが、 アクセンチュアと会津大学、スマートシティに関する取り組みでAPIを強く押し出している点は今後注視しなければいけないトピックですね。トヨタがすすめるスマートシティなども気になるところです。
資金調達
調達周りでは、パンデミック最中のアメリカで、Postmanが約160億円と高額の資金調達を行ったことが最も大きなトピックでしたね。すでにしっかりとした土台を持つプロダクトではありますが、今後さらなる加速的な成長・展開が期待されます。
Postmanは Open API InitiativeにもJOINしており、このAPI標準化・推進の分野においても存在感のある企業になりました。
また、最近発表されたばかりですが、Googleに買収されたApigeeのメンバーが新しく立ち上げたStepZenが資金調達したトピックも印象的でした。GraphQL API周りのこの分野はPrisma・Hasuraが先駆けですが、さらに活発になりそうです。
国内に目を向けると、各種SaaSのアカウント管理・権限設定を自動化する「YESOD」のイエソドや スーパーをアプリ化する「Stailer」がAPIに関連するサービスの資金調達としてはトピックだったなと思います。
前者は各種SaaSのアカウントAPIを利用した統合およびAPIの提供を行っていますし、後者はネットスーパー立ち上げサービスとして、開発に必要なAPIやデータベース、消費者向けのアプリ、分析ツールから運用までをセットで提供しているというがポイントです。
API レポート
最後は今年のAPIトピックを振り返るにふさわしい API Report周りを取り上げたいと思います。
API Management・TestingのSmartBear・API開発・コラボレーションのPostmanが公開しているAPI Reportはそれぞれ目を通しておいて損は無いものです。今のAPIに求められている要素・機能・今後がそれぞれわかりやすくまとまっています。
また、国内ですとiPaaS・クラウドRPAのBizteXが公開したSaaS連携マップ、手前味噌ですが私の Horizontal SaaS 647種類のAPI提供状況を調査は今後のSaaS(SaaS以外にとっても) API連携の重要な情報源として活用できると思います。
おわりに
普段から私はAPI関連ニュースを常にウォッチしていて、ツイッターで垂れ流しにしています。今年はおよそ1500件ほどのAPI関連ツイートをしていて、そのなかでも200件ほどがプレスリリースなどのAPI関連トピックになっていました。
最初は10個くらいをとりあげて、今年のWeb API News 10選!みたいにやるつもりが、自分のツイートを漁っていたら、あれよあれよという間に、こんな数になってしまいました。
しかし、こうやって見渡してみると、APIビジネス・エコシステムの活況といったものが感じられますね。
来年もこういった記事がかけるように、引き続きAPI中心の生活を送っていきたいと思います!
それでは皆さん良い年末を!