日本でも有数のラグジュアリーホテルを運営している星野リゾートでは、「星のや」ブランドの海外展開にあたり、ASTERIA Warp + QuickBooks JDBC Drivers を導入してオペレーションを管理するシステムのグローバル対応を自社開発で実現しました。10数年にわたり高度なオペレーションの品質や効率化を目指して改良を重ねてきたホテル業務管理や管理会計の基盤は星野リゾートを支える隠れた強みです。海外拠点である台湾の「星のや グーグァン」の業務に国内施設で培った星野リゾートの業務管理・管理会計を適用するために海外対応版を開発されました。 CData のドライバー製品がどんな使い方をしているのかを教えていただきに、星野リゾートの銀座オフィスにお伺いし、グループ情報システム部の久本様、梶原様にお話を伺いました。
ミーティング場所がウエディングサロンだった
こんにちは。星野リゾートさんのIT チームは銀座の星野リゾートのブライダルサロンと同じ場所にあるんですか? なんだか、私、場違い感が(笑)
よろしくおねがいします。システム部は軽井沢とこちら銀座にオフィスがあります。この部屋もおしゃれでしょう。ここで結婚式のプランとか作るんですよ。
東京ウエディングサロンはこちらです:
自分は結婚式なんてずいぶん昔で。インドネシア赴任のタイミングで結婚したから結婚式もインドネシアのバリ島で。当時のホテルは経営が変わったので、名前が変わってなくなっちゃって寂しいです。
ホテルは施設を所有している会社と運営している会社が別々であることが一般的です。運営会社が変わればブランドは変わりますね。所有する会社が変わっても運営会社はそのままということもあります。我々はホテルは所有しておらず、オペレーションの質とブランド価値を上げていくことをやっている運営会社です。
システムはがっつり自社開発
のっけから知らない知識を勉強してしまいました。 今回は事例インタビューの時間を頂き感謝です。こういった開発の裏側はオープンでいいのですか?
星野リゾートは、システムの内製化を進めているのでこういったお話をエンジニアに届けてもらい興味を持ってもらいたいと考えました。
久本さん
「システム内製化」なんてホットなトピックですね。
流行る前の10数年前から、元々自社開発でカスタムアプリケーションを作ってました。自社で設計して、パートナーSIer に開発してもらっていました。 そのころは従業員300名ぐらいの中小企業だったので、カスタムで基幹システムを作るといっても相手にされなかった。 じゃあ、SAP やOracle のERP がフィットするかといえばそうではないので、自社開発するしかありませんでした。
流行りなんて言った私が悪かったです。どんなシステムを自社開発で作ったのですか?
まずはWeb 予約システム、満足度を可視化するシステム、生産性を可視化するシステムです。
生産性を可視化するシステム???
ホテル業界一般って、生産性がめちゃくちゃ低いんです。 旅館はその中でも低く、アメリカを100 としたら20と言われているぐらいです。 職種ごとに特化した人を雇っていることが一つの原因です。フロント、清掃、レストラン、調理といった形で。
それはそうですね。全然違う仕事ですもんね。
それぞれピーク時間以外は忙しくないことが問題です。 ほとんどの時間はリソースが余っているのに、いざピークになると人が足りない。
たしかに清掃とかチェックアウトからチェックインまでの数時間ですし。
星野リゾートは、それらをマルチタスクで動かそうというアイディアを持った運営会社です。製造業の取り組みを勉強し、それをホテル運営に展開することで「サービス業のトヨタ」を目指しました。 また、部門別の人件費を把握する必要があるのですが、他部門や他ホテルへのヘルプを行った場合でも、それらのコスト配賦も正確に行えるようにしました。 そんな業務システムはパッケージではなかったので、自社で作るしかありませんでした。
そこまでできるパッケージはないでしょう。Activity-based Cost なんて製造業の原価か銀行とかのイメージでした。
ABC なんて当時だれも業界では知らなかった。なので、自分でデザインして開発を外注して作っていました。 ここ数年はマーケットが変わって、開発リソースも自社で保有するようになっています。
マーケットがどう変化してきたのでしょうか?
SIer が需要過多になっており、費用が上がっていることは否めないです。また、ホテルの売り上げ向上のキモがデジタルマーケティングになっており、競争力を維持するには素早く、継続的な開発が必要です。
もう一つ、AWS などのクラウドインフラや、ASTERIA Warp、kintone、CData Drivers など便利なツールがあり、デザイン力がある人+軽めのエンジニアリソースでも業務システムが作れるようになったことも大きいです。
梶原さん
内部人材の育成と経営層のシステム内製化へのコミット
内製化でどんなところがポイントですか? やっていることがかなり特殊なのでホテル業務の知識とかホテルオーナーがどういった点を見ているかなど知らないとできないですよね?
ドメイン理解のある人にデザインをさせることが重要です。 現場に出ていた社員の中から結局システムデザインをできる人を育てました。外部の専門家の力を借りて育てました。
ちなみに私、3年前にはホテルのレストランで仕事してましたよ。
えええ?
外部のシステムエンジニアを入れるだけではやはり、自社システムってできないです。
ただし独りよがりでもよくないので、いまでもアーキテクチャは外部の専門家に週次でレビューしてもらっています。
これは、ほかの内製化を検討している企業の一つの見本となるやり方です。
次に重要なのが、経営陣のコミットです。 代表の星野が開発の優先順位を決める会議に毎月入っています。プロジェクトが遅れたり、差し込みプロジェクトで待たせる時には代表が他部署を説得することもあるくらい。 代表が本気だから、他の関連部署の責任者はすべてシステム投資判断会議に出るようになりました。なのでようやく「システムチームが経営に寄与できているな」という実感を持って仕事ができています。
代表自身がそこまでシステム開発・内製化にコミットされているのは本当に理想です。どんどん事業会社にエンジニアが集まる中でもエンジニアにはやりがいのある会社ですね。
CData JDBC Driver for QuickBooks は海外進出で利用
内製化と管理会計システムの話が面白すぎて、全然CData 製品の話にたどり着けないです(笑) 今回のプロジェクトについて教えてください。QuickBooks Drivers を使ったプロジェクトの背景はズバリ海外進出?
その通りです。今回、台湾に星のや グーグァンを開業しました。インドネシアのバリ島に続く2件目の海外でのホテルです。
台中の温泉峡谷に開業した星のや グーグァンはこちら:
台湾にオープンした星のや グーグァン
ニュースで見ました!
海外のオペレーションでも、星野リゾートの強みであるマルチタスクの計測・管理をやりますので、対応するシステムを組む必要が出てきました。 日本の会計パッケージでは、まだまだ海外を含めた管理は難しいです。でもグローバルERP を入れるのもコストが合わない。 海外の一つ一つのホテルは中小規模事業者ですから。しかも高度なカスタマイズを行わないとERP も使えないので。
ASTERIA Warp を異なるシステム間のデータ連携とコスト賦課計算のコアに利用。 日本ではスクラッチ開発したタスク管理システムはkintone で置き換えて海外版を作りました。 スタッフ1人の1日の勤務を1レコードにして、時間ごとのタスクをサブテーブルの項目として持つ形で。
これはすごい。マウスでドラッグ&ドロップで動かせるので便利そうです。こんなプラグインあるんですか?
カスタム実装でJavaScript 書きまくりました(笑)。kintone は結構頑張ってます。去年のkintoneHIVE では、東京大会を見事勝ちました。全国大会グランプリ逃しましたが。
Cybozu Days で紹介されていたのを拝見しました。
今回のシステム全体はこんな感じです。 ・各国の会計は税務や給与計算もありローカルのシステムを使わせる ・ただし、社内のマルチタスクの計測・P/L 管理をQuickBooks +Tableau で見る ・QuickBooks は各国の加工されたデータを保存するデータストア ・Tableau でホテル業界のユニフォーム会計のレポートを自作した ・ASTERIA Warp は個々の会計アイテム、従業員の打刻・給与、コストデータから管理会計GL を作るモジュール
ASTERIA Warp を中心に複数のシステムをつなぎ、コスト賦課までを実現
これは熱い!海外の会計データをQuickBooks に連携してグローバルで見れるようにしているだけじゃなくて、途中でタスクベースで案分したコスト配賦してる!?
正直、会計とか製造オペレーションとかわかる人じゃないと無理ですね。この話でここまで食いついてくる人、疋田さんがはじめてですよ。
私、前々職で銀行の係数とか管理会計とかどっぷりやってたんです。なので今日のお話は、どストライク。
どうりで! 元という話でいうと、私は元Intuit で日本版QuickBooks の開発してたんです。
どうりで!(笑)
QuickBooks では日本の多くの会計ツールではできない他通貨会計ができる。 そして勘定明細を無制限に持てるので、時間ごとのタスクに切った従業員データで伝票の10倍以上のデータを入れても気にしなくていい。
QuickBooks は海外では大人気ですから、CData のドライバーの中でもグローバルでは売れ筋製品です。 日本でも海外企業の買収などで買収した企業がQuickBooks を使っている場合などで、データ連携ニーズは出てきてます。
QuickBooks やっぱり、いいでしょ。うれしいですね。
CData JDBC Drivers でQuickBooks 連携をされた理由は?
はじめASTERIA Warp は国産ツールなので海外会計のQB をつなぐアダプタがあるなんて思わなかった。でもASTERIA の方からCData JDBC Driver for QuickBooks Online を紹介されて、試してみたらASTERIA Warp からノーコードで使って違和感が全くないドライバー。 コネクタ部分を自社でつくることまで考えていたが、渡りに船というやつでした。 しかも日本チームがASTERIA と協業関係にあること、日本でのサポートが素早かったことも導入に+でした。
RDB コンポーネントとして普通にSQL でCRUD できるので外部アダプタを使っているという感じはないです。ASTERIA Warp を使ってコスト賦課した仕訳明細をQuickBooks の明細に書き込む処理、QuickBooks のデータを取得してTableau に流す処理の両方を実装しました。QuickBooks の細かい明細までテーブルとしてASTERIA Warp から扱えるので助かりました。
今後もグローバルなオペレーションへのシステムカバレッジは増えますか?
インドネシアの星のや バリでも同システムに接続する予定です。 Global GL にQB を使うやり方は今後も拡大していきます。CData では、海外・国内の多様なシステムへのコネクタを提供しているので、今後ともいろいろな案件で検討したいです。
今日はありがとうございました!
まとめ
星野リゾートさんでは、ホテル業界の中で誰も試みないマルチタスク管理というニーズがあり、必然的にシステム内製化をされたという話が一番印象的でした。「なぜ?」の部分に筋が通っています。そして内製化を成功させるための数々の取り組みも他社の見本となるものと感じました。日系企業の海外進出に伴う海外の会計ツールなどとの連携ニーズについては今後どんどん高まってくると思われます。CData Software は海外の会計・ERP ツールなどへの連携を得意としています。是非、アダプタ・コネクタが足りない際には、CData にご相談ください。
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